アシックス ランニングをリリース
かつてO氏が志向したように、Sを総合的に均衡のとれた企業にしたいというなら、そのような運動として「トランスフォーメーション」は有効であろう。
しかし、それをV字復活の切り札のように言うところに非現実性があるのである。
「トランスフォーメーション」の守りの施策の要は、今までほとんど手つかずであった部品コストの削減であった。
未着手であっただけに本気で取組めば効果が大きいという計算であろうか。
Sほどの規模になるとそのスケールも壮観である。
発表によれば、2007年3月までに部品、素材の調達先を5分の1にまで絞り込むという。
発注を集約することで、大幅な仕入れ価格の圧縮を迫るやり方は、NがK・G氏のもとで徹底的におこなった手法である。
コストカが商品力再生の底力になるという「モノづくり」の基本法則を、Sもようやく採用したことになる。
2003年6月からSの社外取締役になったG氏のアドバイスによるものかどうかは知らないが、果たしてこのような基本施作がSには可能なのであろうか。
初年度からのつまずき2003年度(2004年3月期)の決算は、「トランスフォーメーション」の初年度における成果のバロメーターとしての意味を持つはずである。
部材のコスト削減は、売上高原価率の変化に表れる。
Sの原価率の2002年3月期と比較した低減率は、わずかにマイナス1.7パーセントでしかない。
M電器が同期間でマイナス4.1パーセントも圧縮していることを考えれば、その取組みはあまりに緩慢すぎる。
部品の共通化といった問題は、難度の高い「モノづくり」の技のひとつである。
設計段階だけの「机上の」作業でできることではない。
製造部門をすべて別会社化してしまったSには、製造部門と開発部門が一体となって取組んでいる他社のようなノウハウは生み出しにくいはずである。
言うまでもなく部品の共用化は商品設計を縛ることになる。
商品力を落とさずに、どうこれをこなしていくかは、製造現場の地道な協力や知恵に支えられて初めて可能となる。
特にSのように小型化への進化を重視する企業には、他社以上のハンディになるはずである。
Sのサイズ志向の遺伝子は、M氏が自らマーケティングした大ヒット商品「ウォークマン」によって生み出され、Sの設計思想を方向付けた。
「ウォークマン」の特許は、ヘッドホンのミニジャックをステレオ用の3芯仕様にしたことしかなかった。
特許の壁が低いだけに本来なら他社の参入によって混戦状態に陥るのが当然だったろう。
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